人材不足の解消はロボット技術で
外食産業が、深刻な人材不足に陥っています。もちろん若年層人口の減少ということもありますが、労働環境が大きく変わってきていることも大きな原因です。たとえば、ブラック企業やブラックバイトという言葉がクローズアップされるように、長時間労働や残業代未払い、あるいはパワハラなどが社会問題となりました。また、毎年見直される最低賃金は、2016年10月には近年最大の上げ幅となり、人にかかるコストがどんどん上昇しています。このような中、店舗オペレーションなどの標準化により運営コストを抑え、他店舗展開により利益を拡大させてきたチェーン居酒屋などが、閉店や業態変更などを余儀なくされています。たとえば、多品種のメニューが売りの居酒屋は、メニューが少ない焼鳥屋や唐揚屋などに、調理場に人が必要なレストランは、調理の必要が無いコーヒーショップなどに業態を変えているのです。
そんな中、外食チェーンのリンガーハットの取組みが注目されています。
『株式会社リンガーハット(本社:品川区大崎、代表取締役社長 秋本英樹)は、「リンガーハット 新宿神楽坂店」(東京都新宿区)を2015年12月21日(月)にリニューアルオープンいたします。本店舗は、リンガーハットで初めて生ぎょうざ直売所「GYOZA LABO」を併設した店舗となります。「GYOZA LABO」では、2016年1月中旬より約3か月間、経済産業省のロボット導入実証事業として「アーム型ロボット」が期間限定で登場し、生ぎょうざをピッキング・箱詰めします。』(リンガーハット公式HPより)
この「生ぎょうざピッキングロボット」は、2016年4月には、アリオ柏店の「食品物販店」エリア内「GYOZA LABO」コーナーに設置され、『成形された「生ぎょうざ」をピッキングしてトレイに定量で配置する』作業を行っています。今はまだ、人寄せアトラクション的要素が大きい「生ぎょうざピッキングロボット」かもしれません。しかし、生ぎょうざ成形や持ち帰り包装など、今後確実にロボットが担う事ができる作業があると予感させるものではないでしょうか。
この「生ぎょうざピッキングロボット」導入に際し、リンガーハット役員は「料理を作って出すだけならロボットでもできるが、それなら自動販売機でもいい。レストランとして接客やサービスにより力を入れるにはロボットが必要」(日経MJより)と述べています。つまり、ロボット導入の目的は、人しかできない部分を差別化していくためのもので、すべての作業から人を排除するものではないのです。より高品質な人のサービスを維持するために、ロボット活用が必要なんですね。
ロボット活用に関しては、介護業界でも注目が集まっています。それは、動きにくい高齢者の移動介助や、寝たきりの人の体位変換など、今までなら体力のある男性しか担いにくい作業について、ロボットが担ってくれるというものです。慢性的に人材不足に直面している介護業界にとっては、高齢者や女性の労働環境改善に役立つものと期待されています。しかし、一方ではロボットの「冷たい」イメージから、介護という現場にはそぐわないという意見もあり、今後の動向が注目されます。
仕掛け人は、「TOKIMEKU JAPAN」を起業した塩崎良子さんたち。塩崎さんは、ファッションバイヤーとして世界中を飛び回っていた際に、人材不足が顕著な業界において、人の作業の一部をロボットが担うことへの期待はますます高まっています。日本の経済発展にも大きく寄与すると期待される「ロボット開発」は、まだまだ発展途上かもしれません。しかし、ロボットの「適材適所」を進めれば、きっと人とうまく調和しながら作業を分担できるのではないでしょうか。現実的な活用シーンを増やし、人材不足に一石投じる時代は近いと感じています。