BOPビジネスの可能性を拡げるソーシャルフランチャイズ
BOPビジネスという言葉をご存知でしょうか?
BOPビジネスとは (日本貿易振興機構:ジェトロホームページより)
『年間所得が購買力平価(PPP)ベースで、3,000ドル以下の低所得層はBOP(Base of the Economic Pyramid)層と呼ばれ、開発途上国を中心に、世界人口の約7割を占めるとも言われています。
BOPビジネスとは、途上国のBOP層にとって有益な製品・サービスを提供することで、当該国の生活水準の向上に貢献しつつ、企業の発展も達する持続的なビジネスです。』
ジェトロホームページのアジア経済研究所の調査資料によると、BOPビジネスの対象人口は40億人以上、市場規模にして日本のGDPに相当する5兆ドルだそうです。BOPビジネスは、企業がこの層を対象に物やサービスを売って儲け、同時にこうした商品が手に入るようになることで低所得層の人々の生活も改善されるという、Win-Win関係が成り立つことが特徴だとされています。
さて、このBOPビジネスにフランチャイズの手法を取り入れ成功している事例を、世界資源研究所の資料からご紹介しましょう。
まずは、最大のスラムであるキベラをはじめ、ケニヤ国内の64か所でフランチャイズクリニックを展開するCFWshops Kenyaです。64店舗のうち、42か所は市域の保険医療従事者が、残りの22か所は有資格の看護師がフランチャイジーとして独立採算で経営しています。
それぞれのフランチャイズ店舗では、医療サービスおよび、政府公認の医療品・医薬品を低所得者層が購入できる安価な価格で販売しています。たとえば、マラリアを媒介する蚊を予防するための蚊帳、下痢やアメーバ症を予防するための水処理薬品を提供したり、看護師が在席する店舗では、各種スクリーニング検査により幅広い医薬品を投与しています。元々、低所得者層に対する偽医薬品などが多く出回り、政府支給の薬でさえ信用できないケニヤでは、CFWshopsフンチャイズのフランド力と信用、サービスは住民にとって大きな意味があるのです。
CFWshops Kenyaのフランチャイザー本部としての役割は何でしょうか。本部は、64店舗を抜き打ちで監査し、製品の質や価格について厳しい基準を守る様に指導しています。これにより、CFWshops Kenyaのブランド力が維持され、マーケティング費用の削減、一括(大量)購入による仕入れ価格の値下げなどが可能になっています。BOPビジネスにおいても、一般的なフランチャイズビジネスの本部機能と役割は同じであることがうかがえます。
1890年同じ医療分野でBOPビジネスをフランチャイズ展開し、成功しているのがインドのJananiです。Jananiは、3万軒を超える既存小売店、農村部の保健医療サービス提供者4万人のネットワーク、医者のいる診療所520カ所を通じ、避妊薬・避妊具を低いコストで販売することに重点を置き活動しています。2005年の実績では、5,790万個のコンドームと経口避妊薬990万セットを販売し、160万カップルの希望しない妊娠を防ぐことができたそうです。
この他、低所得層に、低コストのジェネリック医薬品、精製水、粉ミルク、コンサルテーション・サービス、術前サービスを提供するメキシコの医薬品チェーンMi Farmacita Nacionalの例も成功例として挙げられます。(以上、世界資源研究所2007年資料より)
前段でご紹介したBOPビジネスの例は、どこもフランチャイズ形態で事業を拡げ、雇用を創出し、地域社会に根ざした保健医療基盤を構築しています。これらは営利のみを追求するものではなく、社会的な問題を解決するための活動をおこなっていることが特色で、最近ではこのようなビジネス形態は「ソーシャルフランチャイズ」と呼ばれています。
BOPビジネスを「ソーシャルフランチャイズ」という形態で拡げていく取組みに、今後も注目したいと思います。