神も仏もフランチャイズ?
関西地方を中心に、お正月の恒例行事として盛り上がる「えべっさん」をご存知でしょうか?1月10日を中心に、9日の宵えびす、10日の本えびす、11日の残り福と3日間に亘って賑やかに街を彩ります。その中心となるのが、「えびす神社」です。
えびす神社とは、「えびす神」をお祀りする神社の事ですが、この「えびす神」が誰を指しているのかは、諸説が存在しています。
『えびすは日本の神で、現在では七福神の一員として日本古来の唯一(その他はインドや中国由来)の福の神である。古くから漁業の神でもあり、後に留守神[1]、さらには商いの神ともされた。夷、戎、胡、蛭子、蝦夷、恵比須、恵比寿、恵美須などとも表記し、えびっさん、えべっさん、おべっさんなどとも呼称される。えびす神社にて祀られる。日本一大きいえびす石像は舞子六神社に祀られており、商売繁盛の神社とされている。
「えびす」という神は複数あり、イザナギ、イザナミの子である蛭子命(ひるこのみこと)か、もしくは大国主命(大黒さん)の子である事代主神(ことしろぬしかみ)とされることが多い。少数であるが、えびすを少彦名神や彦火火出見尊とすることもある。また、外来の神とされることもあり、「えびす」を「戎」や「夷」と書くことは、中央政府が地方の民や東国の者を「えみし」や「えびす」と呼んで、「戎」や「夷」と書いたのと同様で、異邦の者を意味する。このように多種多様の側面があるため、えびすを祀る神社でも祭神が異なることがある。』(Wikipediaより)
「えびす神」を誰とするかにより、えびす神社は「ヒルコ神系」と「事代主(ことしろぬし)神系」とに大きく分かれています。「ヒルコ神系」のえびす神社の総本社は、西宮神社で、「事代主神系」の総本社は、今宮戎神社です。これら二つの総本社から分霊(勧請)によりその他の神社へと広がったため、二つの系統が各地に存在しています。このような、どこかの総本社等から分霊により出来た神社を「勧請型神社」と呼びます。えびす神社の2系統の神社グループは、どれもこの「勧請型神社」という事になります。ちなみに、神社の別の形態としては、もともとその土地を守る神様を祀る「産土神(うぶすな)型神社」が存在しています。
えびす神社以外にも、多くの神社を擁する「勧請型神社」が存在しています。大きなグループとしては、次のようなものが有名です。
1.稲荷神社:総本社は京都の伏見稲荷大社(グループの総神社数は約3万社以上)
縁起:奈良時代の和銅4年(711)2月初午の日に稲荷山に御鎮座。
五穀豊穣、商売繁昌、家内安全、諸願成就の神
2.八幡神社:総本社は大分の宇佐神宮(グループの総神社数は約2万社以上4万社とも)
縁起:725年聖武天皇の勅願によって現在地に遷座して神殿を造営
誉田別尊(応神天皇)をお祀りし、皇室との縁が深い。五穀豊穣の神
3.天満宮:総本社は京都の北野天満宮(グループの総神社数は約1万社以上)
縁起:天暦元年(947)に神殿を建立
菅原道真公をおまつりしており、学問の神様として知られる。
このほか、諏訪神社や春日神社なども、「勧請型神社」の大グループとして知られています。
少し見方を変えてみると、こうした「勧請型神社」のグループ化は、まるでフランチャイズ方式の様だと感じます。お祀りする神様や、祭礼の日などを共有しながら、信仰を拡げて行く方法です。同様に、お寺も宗派ごとのフランチャイズ方式と考えられます。総本山からの階層化も含め、神社よりも強い結びつきでグループ化されています。
宗教を商売と一緒に考えるとは、不謹慎かもしれません。しかし、長らく私たちが文化として親しんだ神仏が、まったく新しい経済の仕組みに似ているというのは面白いと思いませんか?
先人の知恵に倣うというのは、案外こういうところにもヒントがあるのかもしれませんね。