モーテルフランチャイズ
日本に自由な旅を広めたい
アメリカ映画の1シーンで、何らかの犯罪に巻き込まれた主人公とヒロインが、大きな車で砂ぼこりの道を逃げ、二階建てのアパートの様なモーテルに宿泊する場面を見たことがありませんか?荒野の中のモーテルは、アメリカの片田舎の風景として脳裏に焼き付いています。
さて、日本ではそのようなモーテルを見かけることはあまりありません。モーテルといえば、むしろラブホテルを現す言葉の印象が強く、家族連れがドライブがてらに気軽に宿泊するものでは無いからかもしれません。
しかし、今から遡ること23年、「日本にも誰でも気軽に泊まれるアメリカンスタイルのシンプルなロードサイドホテルがあればいいのに」と思った人が居ました。それが、株式会社旅籠屋社長の甲斐真さんです。
1994年7月に(株)旅籠屋本店(当時)を設立した甲斐さんの前には、次々と宿泊業に関する法的規制の壁が立ちはだかりました。しかし、それらを一つずつ解決し、1995年8月に1号店の「鬼怒川店」をオープンしました。それから丸3年間、実際に自分自身が店舗運営を行うことで、モーテル型ホテルをどのように運営したらいいのかを考えました。そして、以降の多店舗化に備えたチェーン本部を設立した上で、2000年4月に2号店となる「那須店」を満を持してオープンしたのです。
そして、5号店となる「沼田店」からは、『遊休地の所有者に建物を建築いただき、これを20年間当社が借り上げて経営と運営を行うという方式を中心に出店を行っています。』(公式HPより)とあるように、遊休地の所有者の資産運用、相続税対策としての土地活用を提案し、店舗を増やしてきました。2017年10月には、何と67店舗目の「境港店」がオープンし、来春に予定している3店舗を合わせると、何と70店舗ものチェーンホテルに成長したのです。高速道路のPAやSAで営業している店舗もあり、旅籠屋が車で旅する人に特化したホテルであることがわかります。
旅籠屋の特徴は、日本には珍しいロードサイド(道路に面した)ホテルというだけではありません。ホテルには食堂は無く、部屋の消耗品(歯ブラシなど)サービスもありません。23時にはフロントが消灯し、翌朝7時まで開きません。そのため、チェックインを23時までにできない場合は、自動的にキャンセル扱いとなります。ただ、チェックイン後に有料のサービスが無いため、チェックアウトは鍵を返すのみ。何時でもチェックアウトは可能です。
フロントが23時に消灯するのには、理由があります。それは、ユニークな運営方式によるものです。旅籠屋の各店舗を運営している支配人は、住み込みのカップルと決まっており、勤務時間が朝6時半から23時と決められています。
旅籠屋では、『住み込み支配人』の条件を次の様に定めています。
『住み込み可能なお二人(※)。年齢60歳未満。要運転免許。※人生のパートナーという意味です。戸籍上の夫婦であるかどうかは問いません。LGBTの方も同様です。』
また、ホテルには定休日はありませんので、『住み込み支配人』が二人そろって休みを取れるようにと考えられたのが、『代行支配人』です。こちらは、レギュラー支配人が不在の間だけ、パートで支配人をつとめます。やはり、人生のパートナーである二人というのが採用条件です。この2タイプのカップル支配人により、旅籠屋は運営されているのです。
旅籠屋はチェーン本部の統括の下、各地の店舗を直営しており、フランチャイズ方式ではありません。住み込み支配人は、すべて株式会社旅籠屋の社員です。これは、「シンプルで自由な、旅と暮らしをサポートする」という基本理念を堅持し、ローコスト・ローリスク運営というポリシーを徹底するためだそうです。
23年前、日本に自由な旅を広めたいという一念で起業した甲斐社長。旅籠屋が日本に自由な旅をもっともっと拡げてくれることを期待したいと思います。