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飲食店の事業継承

後継者は会社?人?それとも地域? 飲食店のこれから

人材不足と呼ばれて久しくなりました。いよいよコンビニ大手でも、人材不足により24時間営業を見直す店舗が出てくるらしく、家の冷蔵庫はコンビニだと豪語していた人たちも、そうは行かない時代がやってきます。

さて、人材不足という言葉は「働く側」に使われることが多いのですが、実はそれだけではありません。「雇う側」も人手不足になっています。そう、経営者の後継者が見つからないのです。

経営不振でもう事業を畳んだ方がみんなのためだというケースならともかく、事業は順調でこれからますます新規事業に打って出たいと思う場合、後継者が居ないと10年20年先を思い描くのはむつかしくなります。実は、そんな事態の解決策として、老舗レストランが大手チェーン経営会社へブランドごと事業売却するM&Aが増えているのです。ブランドは継続しているので目につきませんが、次のような例があります。

 ・にし家・浪花そば(昭和32年、46年創業)2002年にがんこフードサービスへ事業継承)
 ・正弁丹吾亭(明治26年創業:2014年にがんこフードサービスへ事業継承)
 ・銀シャリ屋ゲコ亭(昭和34年創業:2013年にフジオフードシステムへ事業継承)
 ・はらドーナッツ(平成20年創業:2016年にフジオフードシステムへ事業継承)
 ・銀座田中屋(昭和31年創業:2017年にグルメ杵屋へ事業継承)
 ・千成屋珈琲(昭和23年創業:2017年にLIFE styleへ事業継承)
 ・因幡うどん(昭和26年創業:2016年に力の源パートナーズへ事業継承)
 ・銀座木屋(昭和45年創業:2019年にクリエイト・レストランツ・ホールディングスへ事業継承)

これらの事業継承は、どれも元々が持つブランドイメージを大切にしつつ、経営体質や従業員待遇などを新会社のスタイルで改善していくというもので、どれもその後出店数を伸ばしています。

さて、すでにブランドを確立している飲食チェーンなら、大手のフランチャイザーに事業継承できますが、着実に営業している個人店の場合はどうなるのでしょうか。

帝国データバンクの調査(2017年 後継者問題に関する企業の実態調査)によると、飲食店を含むサービス業の後継者不在率は71.3%に上るそうです。この後継者不在の原因としては、飲食店を含むサービス業の「働き手の人手不足」「長時間労働問題」などがあります。子供が居ても、しんどい店を継がせたくないと思う経営者が多いのかもしれません。

このような後継者問題に、自治体が行っている面白い取り組みを見つけました。その名も「絶メシリスト」。群馬県高崎市が2017年に始めたグルメサイトです。高崎市の広報誌では、このサイトのことが次のように紹介されています。

『昔から地域の人たちに愛されてきたおいしい店。こうしから地域の人たちに愛された飲食店は、後継ぎがいないなどの諸事情から閉店してしまうケースも少なくありません。長年営まれてきた店には、その店の歴史や店主の人柄など「行ってみて、感じてみなくちゃ分からない」地域に愛されるだけの理由があります。あの店を失いたくない、店のことをもっとたくさんの人に知ってほしい、できれば後継者や働き手の獲得に繋げたい。そんな思いから生まれたのが「絶メシリスト」です。』

最初は17店舗で始まったリストは、現在57店舗に増えています。中には閉店したお店もありますが、店や経営者の思い出が代わりに掲載されています。ただ、絶メシリストの「後継者募集」のコーナーへの掲載はたった4店。そこには、店の継続に対する経営者の葛藤が見え隠れしていると感じます。

さて、この絶メシリスト、現在福岡県柳川市、石川県などへ横拡散中です。暗くなりがちな後継者探しを明るくみんなで盛り上げようという試みで今後の展開が楽しみです。