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メイド・イン・ジャパンの価値

回転寿司といえば、今や世界中に広がるメイド・イン・ジャパンです。1958年に東大阪市の布施にある『元禄寿司』が発祥で、1970年の万国博覧会をきっかけに、日本中に広がったことは有名ですね。

さて、その回転寿司は、ベルトコンベア寿司として、1990年ごろから海外でも見られるようになりました。中でもいち早くチェーン展開が始まったのはイギリスです。パディントン駅への出店で一躍有名になったYo! Sushiが、その先駆けとなりました。外国での寿司といえば、和風の店づくりと思いがちですが、そうではありません。Yo! Sushiの店舗は、日本のサブカルチャーを全面に打ち出しており、コスプレ―ヤーやオタクなどがトウキョウを闊歩する写真や派手な電飾が目印となっています。創業者のサイモン・ウッドロフは、「ロボットがスシを握り、コンベアでスシを動かす回転寿司は未来的なエンターテーメント」であると述べ、イギリス人が日本人に持つ、サブカルチャーとハイテクの国というイメージに合わせた演出で成功をおさめています。

ドイツでは、SUSHI FACTORYという回転寿司チェーンが北部を中心に広がっています。このチェーンを始めたのは、Bodo von Laffertさんというドイツ人です。彼は、日本の神戸大学に留学中に触れた回転寿司に魅了され、卒業後自国で回転寿司チェーンを起業しました。彼は、iPadを使ったメニュー(オーダーシステム)を開発し、効率的な店舗運営を進めています。かたや、日本人を積極的に採用し、味やサービスのきめ細かさを、なるべく日本レベルに維持できるよう努めています。

本家本元の日本発回転寿司チェーンはどうでしょうか。まず、海外展開の店舗数が一番多い元気寿司は、ハワイへの直営店出店を足掛かりに、アジア各国に現地法人との提携によるフランチャイズ展開を進めてきました。現地の文化に合わせたメニュー開発により、すばやい海外展開を可能にしてきたと言われています。しかし、注目したいのは、最近のくら寿司(KURA-SUSHI)の米国への展開です。くら寿司は、2009年にカリフォルニアに米国一号店を出店しました。この出店から6年後の2015年、満を持してサンディエゴに出店した“フルバージョン店”で、人気に火が付きました。日本と同じ「無添」「高速レーン」「タッチパネルによる注文」「ビッくらポン!」「皿の手元回収システム」などを備えた“フルバージョン”のくら寿司は、あたかもテーマパークの様な楽しさで、米国のファミリーを惹きつけました。結果、現在では数時間待ちが当たり前という人気店へと成長したのです。

海外での回転寿司の広がりは、もともと寿司ブームだったことに端を発しているかもしれませんが、それだけではありません。イギリスのYo!sushiは、寿司+回転コンベアというシステムに、日本のサブカルチャー的要素を追加することで、現代の外国人が持つ「日本」に対するイメージとの整合性を狙いました。また、くら寿司は、日本のユーザに受け入れられる精度に磨き上げられたシステム(=皿の回収システム、ビッくらポン!など)と、食の安全に対する取り組み(=無添)で、日本人の持つ勤勉さ・真面目さ、モノづくりの精密さなどへの「良いイメージ」を取り込むことができました。まさに、日本発の回転寿司と、「日本」や「日本人」が与える良いイメージの相乗効果と言えるでしょう。

メイド・イン・ジャパンという言葉が再び輝きを取り戻している今、この価値をいつまで維持していけるのか、いつまで良いイメージとして効果を産めるのか、それは私たち次第です。まさに国を挙げてのイメージ戦略に、今こそ乗り出さないといけないと感じます。輝きを失ってからでは遅いのですから。