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フランチャイズ海外展開事情

ドンドンダウン オン ウェンズデイというリサイクルショップチェーンをご存知でしょうか?

このチェーン各店舗では、その名前の通り、水曜日になると値段が下がるのです。ぱっと聞くと水曜日だけ値段が安いのならば、他の曜日には買い物に行かなければよいのでは?と感じますが、そういう意味ではありません。毎週水曜日になると、最終的に100円(最安値)になるまで、一ランクずつ価格表が変わっていくという仕組みです。

これを簡単に行うため、古着には価格ではなく、野菜マークのタグが付けられています。その野菜ごとに10段階の価格が決まっており、毎週水曜日になるとその段階が一段下がる(値下げ)のです。たとえば、ある週にネギのタグが2000円であったならば、次の水曜日には1500円に、その次の水曜日には900円に…と、最終的に100円になる段階までどんどん下がっていきます。

それならば、一番安い100円になった頃に買いに行けば良いのですが、そこまで商品が売れ残っているかどうかわからないというのがミソです。どうしても欲しければ、ある程度下がった段階で購入しないと売り切れる。「どの値段で買うのかは、買う人次第」というゲーム性が斬新だったこともあり、フランチャイズシステムにより国内店舗数を順調に伸ばしていました。

しかし、2013年にM&Aで他の古着チェーンを買収し、原宿に旗艦店となる大型店舗を出したものの、これが振るわず早期閉店に追い込まれてしまいました。その後もチェーン店舖の閉店が相次ぎ、ドンドンダウンという言葉がシャレにならない事態を招きかねない状況か、と危惧されました。しかし、古着という商材の力によって、活路を見出したのです。

ドンドンダウン オン ウェンズデイは、2014年9月にカンボジアに一号店を出店しました。カンボジアで古着を売る?というのは、多くの日本人にとっては不思議な響きかもしれません。しかし、この後、僅か2年の間に店舗は14店まで増え、古着ビジネスは大成功を収めています。一体それは、なぜなのでしょうか。

運営会社のホームページでは、カンボジア一号店の出店に際し、次のようなニュースが書かれていました。

『ついにドンドンダウンが海外に初進出します!出店するのはカンボジアの首都プノンペン。カンボジアではもともと、道路に立ち並ぶ露店が一般的で価格表示がなく、買い物の際に価格交渉をする習慣がありました。この「お客様が価格を決める」という形は、ドンドンダウンの特徴である値下がりの仕組みと通じるものがあり、現地の方々にも馴染んでいただけるのではないかと考えています。また、日本の古着は高品質でデザイン性が高いため、輸出している諸外国でもとても人気がありますので、カンボジアのみなさまにも喜んでいただけると思います。』

元々、古着をゴミとして捨てるのではなく、再利用(リユース)することによりゴミを削減(リデュース)することが、ドンドンダウン オン ウェンズデイの事業目的の一つでした。国内で中古販売できそうにない古着については、マレーシアの自社工場に送られ、仕分けの後アジアなど20ヶ国に再販されていました。(一部再販不可のものは、「ウエス」や「反毛材」として再利用し、廃棄なしと謳われています。)このような経験の中で、海外展開に活路を見出したのは自然の流れだったと思われます。

また、カンボジアを選んだことにも、いくつかの理由が考えられます。一つ目は、周辺国(ベトナムやインドネシア)では禁止されている古着の輸入について、カンボジアでは規制が無いこと、二つ目には、日本の中古商品に対する良い評判が既にあること(複数の日本企業が既に中古品の店舗展開で成功実績あり。)、その他欧米のブランドショップがまだ出店していなかったため、古着でもブランドものへのニーズがあったことなどでしょう。

現在、ドンドンダウン オン ウェンズデイは、順調にカンボジアでの事業を拡大しています。これまでの国内での業績悪化、海外での活路、どれも計算できることではありません。海外展開の理由は色々後付けできますが、本当の理由は企業を守るための『経営努力』と言えるのではないでしょうか。