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M&Aで加速するフランチャイズ経営

公益財団法人 食の安全・安心財団は、毎年「外食産業市場規模推計」を発表しています。この統計資料を見ると、我が国の外食産業市場規模は、1997年の29兆円をピークに2011年まで減少傾向が続いてきました。そして、2011年を底として、以降は少しずつ回復基調となっています。これは、インバウンド観光客の外食需要によるもの、および景気回復に伴う法人交際費の増加によるものと言われています。

では、2016年度の外食売上高ランキングの5位までの企業を見てみましょう。

1位 ゼンショー(「すき家」「ココス」「BIGBOY」「はま寿司」等)
2位 すかいらーく(「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」等)
3位 コロワイド(「甘太郎」「牛角」「かっぱ寿司」「フレッシュネスバーガー」等)
4位 日本マクドナルド
5位 吉野家HD(「吉野家」「はなまるうどん」「京樽」「ステーキのどん」等)

日本マクドナルド以外の4社については、複数のフランチャイズブランドを擁する多角経営となっています。

このうち、5位の吉野家HDに注目してみましょう。吉野家HDは、1958年に牛丼屋の企業化を目指した松田瑞穂が始めた「株式会社吉野家」が法人としてのスタートでした。その後、1980年には一旦会社更生手続きに入ったものの、セゾングループの資本参加によりわずか7年で完済。翌年、ダンキンドーナッツを手掛ける株式会社ディー・アンド・シーと合併し、10年後には解消。それと同時に全国出店を完了。その2年後(2000年)に、株式会社京樽を子会社化と同時に東証一部上場を果たし、米国産牛肉の輸入禁止という荒波にも飲まれることなく、2008年には株式会社どんを子会社化。2016年には、グループ合計3000店舗を突破しました。

この例が示すように、大きなフランチャイジーは他ブランドをM&Aにより買収することで、多角経営へと転換しながら、より安定した大きな企業へと成長しています。実は、吉野家HDには、小さなブランドをいくつも擁する(株)グリーンズプラネットという子会社があります。この会社には、何と10を超えるブランドがあり、驚くことに別のフランチャイザーのエリアフランチャイジーとしての、「ペッパーランチ」3店舗の経営も行っています。次にブレイクしそうな外食は何か、現在ブレイクしているブランドの秘密は何か、実店舗を経営しながら常にアンテナを張っているのではないでしょうか。

吉野屋HD以外のゼンショー、すかいらーく、コロワイドだけでなく、売上高が5位以降の会社を見ても、ブランドのM&Aを活発に行っています。多角的にブランドを持ち、それをM&Aにより売買するというのが、大手の外食企業にとってはあたりまえの事になっているのです。一時的な流行に左右されないためという見方もできますが、実際には、全体が大きくなることで産まれるメリットを追求していると思われます。

『ゼンショーグループは原材料の調達から製造・加工、物流、販売までのすべてを自社の管理下で行う、ゼンショー独自のMMD(マス・マーチャンダイジング・システム)を構築し、これが経営の根幹を担っています。』(ゼンショーHDのホームページより)

外食売上高ランキングで1位のみならず、世界の外食売上高ランキングでも10位以内のゼンショーは、このように、『MMD』と呼ばれるシステムを構築し、調達から販売までを無駄なく進めることで、全体の利益を最大にしています。M&Aにより事業規模を拡大するということが、より合理的な運営につながることがわかります。

「うまい・安い・早い」は吉野屋文化と呼ばれています。これを実行しながら「儲かる」を同時に起こすためには、やはりスケールメリットの追求が欠かせません。そういう意味でも、グループの利益を最大にするための「M&A」に、今後も注目したいと思います。