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老舗コーヒー店がたどる半世紀

関西、特に京都の方ならば、「からふね屋珈琲店」という店に、懐かしさを覚えることでしょう。1972年の創業から、45年にわたり、ダッチコーヒーという水出しコーヒーを看板に、地域密着型の“喫茶店”として、京都を中心に店舗展開してきたコーヒーショップです。

この「からふね屋珈琲店」は、現株式会社 ホリーズ 代表取締役社長兼CEO 堀尾 隆氏が、大学卒業から1年後の1972年に京都で創業した喫茶チェーン店です。当時画期的な24時間営業の郊外型コーヒーショップであった「からふね屋珈琲店」は、最大で60店近くまで店舗数を伸ばしましたが、バブルの終焉と共に店舗を整理。結局創業から34年後の2006年に、株式会社鉄人化計画に全株式が売却されました。創業者の堀尾氏は、フルサービス型の喫茶店経営に限界を感じており、この売却を機に、セルフサービス型の「ホリーズカフェ」へと業態を変更したのです。(ちなみに、韓国で有名なHOLLYS Coffeeは、韓国発のコーヒーチェーンで、日本のホリーズカフェとは全く関係ありません。)

さて、「からふね屋珈琲店」の新たな運営会社となった株式会社鉄人化計画は、都内を中心にカラオケ・エンターテインメント事業を展開する会社です。「かつてないエンターテイメントを」追求する企業風土は、フルサービス型の郊外型の喫茶店であった「からふね屋珈琲店」にも、今までにない「わくわく感」を持たせる仕掛けを考えました。それが、“パフェメニュー”です。『珈琲に合うスイーツの開発を行い150種類以上のパフェの発売に成功いたしました。からふね屋珈琲は次世代の「京都発信のパフェ・トレンド創作」を目指しています。』(からふね屋珈琲店HPより)。と宣言するだけあって、大きさにびっくりのジャンボパフェ(25人分)や、エビフライ・たこ焼きなどがトッピングされた面白パフェなど、圧巻のメニューが並びます。イマドキの“インスタ映え”するパフェの絵は、京都の新名所として若い女性に大人気となっています。

こうして新たな看板を手に入れた「からふね屋珈琲店」ですが、その運命はまたもや大きな転期を迎えます。2015年8月、鉄人化計画は、カラオケ事業への集中のため、「からふね屋珈琲店」の全株式を、ジェイアール西日本フードサービスネットに売却したのです。ジェイアール西日本フードサービスネットの買収時のコメントは、『今後の成長に向け、駅ナカにとどまらず、からふね屋珈琲のブランドなどを活用して市中(駅ソト)展開を加速させたい』というものでした。当初は、郊外型の24時間型フルサービス喫茶店であった「からふね屋珈琲店」は、2017年夏、あべのキューズモールという若者向けショッピングモールに出店しました。若者に人気のパフェメニューが中心となったこの店舗は、「からふね屋CAFE」。とうとう『珈琲店』では無くなったのでした。

「からふね屋珈琲店」の創業者である堀尾氏のご実家は、京都の老舗印刷会社の「からふね屋印刷所」。「からふね屋」という屋号は、印刷所の創業者が親交のあった竹久夢二さんの絵から題材を頂いたのだとか。実家を飛び出して夢のコーヒーショップを創業した隆さんでしたが、その時に持ち出した「からふね屋」というブランドは、オーナーが何度変わっても、それでもしっかりと私たちの前に姿を見せてくれています。

「からふね屋CAFE」のメニューを見ると、色とりどりのパフェの横に、ドリンクメニューがありました。COFFEEのコーナーのトップには、ホットコーヒーではなく、ダッチアイスコーヒーの文字がありました。堀尾さんが手がけるホリーズカフェ。そこのメニューにも、ホリーズ自慢としてダッチアイスコーヒーの文字がありました。45年にわたるコーヒーショップの長い旅は、ブランド名が持つ不思議な力を借りて、ダッチコーヒーという水出しコーヒーを守ってきたのかなと少し嬉しくなった出来事でした。水出しダッチコーヒーをどこかで見かけたら、『からふね屋』というブランドを思い出していただけたら幸いです。