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ノーブランドという一流ブランド

無印良品を展開する良品計画(株)が、来春ホテルを開業します。第一号の『MUJI HOTEL』は、1月に深セン、第二号は3月に北京で開業と発表されました。日本の一号店は、2019年に銀座でオープン予定だそうです。

MUJI HOTELのサイトでは、そのコンセプトを次の様に表しています。

「泊まりながら無印良品を楽しんでいただける『MUJI HOTEL』が誕生します。旅や移動は暮らしの一部になりました。旅はいま、非日常から日常に、参加するものから作るものへと変化しています。MUJI HOTELには、高額で過剰なサービスも、質を削りすぎた殺風景な客室もありません。(中略)タオルの手触り、コンセントやスイッチの配置、レストランのメニューの一つひとつが、よい旅の土台でありたいと思います」

無印良品は、1970年代後半に、西友のプライベートブランド開発の中で、あえてノーブランド(無印)というブランド名のもとに開発された商品群が始まりです。最初の路面店であった青山店の出店当時、そのコンセプトを作った人達がどのような思いだったのか、良品計画ホームページのコンテンツとして提供されている「青山物語」で読むことができます。その中には、1875年創業のイギリスの老舗百貨店から『今の時代に東洋から何を導入するか、私たちは5年間、青山の無印良品に通い勉強させてもらいました。そして現在の東洋から導入したいのは、このブランドしかないと思いました…』という手紙を受け取ったエピソードが語られています。つまり、当時からノーブランドという名前の無印良品が、世界で無二のブランドとして認知されていたことがわかります。

無印良品は、国内452店、海外418店、合計で870店舗(2017年3月)を出店しています。その中で、急成長しているのが中国です。何と、海外店舗のうちの約半分は中国での出店というのですから、驚きです。しかし、無印良品が中国で人気があるというのは少し不思議です。元々中国人の文化では、赤や金色といった派手な色が好まれるのに、白や黒、生成りをベースにした無印良品がなぜ受け入れられるのでしょうか?

中国メディアの今日頭条によると、『現在の中国では、人々の生活や仕事のスピードが速すぎて、みんな疲労困憊している。せめて家に居るときには、シンプルで自然な暮らしを求めている』からなのだそうです。無印良品のコンセプトを真似た低価格の中国ブランドもあるのですが、『価格は高いけれども質が良い日本製』というブランド力で、無印良品が強く支持されているそうです。

さて、良品計画は、今までの様な商品提供だけにとどまらず、旅先の『無印』空間をホテルという形で提供しようとしています。この他にも、2018年末までに京阪電鉄枚方市駅のリニューアルを手掛けることが発表されました。そのコンセプトは、『「郊外駅ナカ商業」「駅の観光資源化」そして「シンプルで心地よいデザイン」の3つの観点から、「いつも使いたい、一度は行ってみたい駅」』なのだそうです。先にご紹介した3つのホテルでも、実はコンセプト作りや商品提供は行いますが、運営は別の運営会社が行います。良品計画が行うのは、あくまでも空間づくりということなのでしょう。

「青山物語」の終章―「世界へ、そして世界から」は、次のような言葉で締めくくられています。

『「くりかえし原点、くりかえし未来」を合言葉に、商品のありかたを探る旅はこれからも続く。』

ノーブランド(無印)というブランドが、挑戦と回帰を繰り返しながら、舞台が世界に広がり、モノから空間へと広がり、次にどこへ広がって行くのかを、楽しみにしたいと思います。