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コンビニは買い物弱者を救済するか

少子高齢化や過疎化に伴う地方の人口減少は、現代日本が抱える深刻な問題といわれて随分と時間が経ちましたが、その解決策はなかなか見出せていません。農林水産省は、「食料品アクセス問題と高齢者の健康」という資料の中で、自宅から半径500メートル以内に生鮮食料品店がなく、しかも自動車を保有していない65歳以上の高齢者の数は、2025年には598万人にまで増加するという見通しを発表しました。いわゆる「買い物弱者」がこれだけ出現するということです。

このような現状の中、「買い物弱者」を救うため、新しい取り組みを始めた地域があります。今回はその取り組みをご紹介しましょう。

長野県といえば、北アルプスや中央アルプスに囲まれた風光明媚な山岳地帯というイメージがありますね。しかし、かたやその地形のために、移動手段を自家用車に頼らざるを得ない町村が多いのが現状です。同県が2010年に実施した調査では、県内の65歳以上の高齢者のうち「買い物に不便を感じている」という人は、23万人以上にも上るというものだったそうです。

このような声を受け、状況を打開しようと動き出したのが長野県南部の飯島町、JA上伊那が2017年にオープンした「道の駅田切の里」です。私の感覚では「道の駅」というのは、ドライブ旅行客向けのお土産などが売られている場所というイメージが強いのですが、ここでは鮮魚や地元産野菜といった生鮮食料品のほか、洗剤などの日用雑貨も並んでいるのです。飯島町は人口9000人あまりですが、町内には生鮮食料品を販売する店はスーパー2軒のみ。この道の駅ができるまで多くの買い物弱者を抱えていました。しかし、道の駅で日用品や食料品を扱うようになってから、多くの買い物弱者が救われました。また、町内では移動手段がない住民に向けた移動販売車も週4回巡回しています。さらに、電話一本で希望の商品を自宅まで届けてくれる買い物代行サービスもあるようで、多い日は50人の住民が利用しているそうです。

 

「道の駅田切の里」を運営するJA上伊那が住民の買い物を支援する活動はこれだけではありません。コンビニ大手のファミリーマートとフランチャイズ契約を結び、山間部の過疎地域に次々と“多目的コンビニ”をオープンさせているのです。

きっかけは、伊那市西箕輪地区にあったJA直営スーパーが過疎化の影響で売り上げが低迷し、閉店を検討しなければならなくなったことでした。しかし、地域住民の買い物の拠点でもあったスーパーがなくなれば、新たな買い物弱者を生んでしまう。それを危惧したJA上伊那が、コンビニへと業態転換を図ることで店舗の存続を目指しました。そして2013年に「ファミリーマートJA西箕輪店」が誕生。現在その店舗数は10店舗へと拡大しています。通常のコンビニ向けの商品である雑誌や日用品だけでなく、鮮魚や肉、野菜に加えて地元の特産品を販売するコーナーも設置しており、道の駅と同じく移動販売車の運行も実施しています。コンビニとして生まれ変わることで、宅配や郵便、銀行のATM機能もそなえており、「買い物弱者」を救うと同時に、閉店を考えていた店舗が総合的な地域の拠点となって生まれ変わったのです。

長野県に関わらず、このような「買い物弱者」を抱える地域はこれからどんどん増えていくことでしょう。人口減少でかつてのような直営スーパーの維持が困難になるなかで、どう「買い物弱者」を救うのか。コンビニフランチャイズがこの問題を解決する一つの手段かもしれませんね。