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外食産業で成功するということ

外食産業の成功とは、チェーン店舖数を伸ばし、どこでも見かけるお店を作ることでしょうか。今回はその真逆の考え方の成功事例をご紹介しましょう。

フードビジネス研究所は、2018年5月に「外食上場企業ランキング2017」を発表しました。
この資料は、外食上場企業95社の売上高をセグメント別、伸び率などでランキングしたものです。売上高伸び率ランキングを見ると、1位は(株)ペッパーフードサービス、2位は(株)DDホールディングスでした。何と前年度38位からの大躍進だったという、このDDホールディングスとは、いったいどのような会社なのでしょうか。

DDホールディングスは、2017年9月に「株式会社ダイヤモンドダイニング」を持ち株会社に移行して産まれました。その始まりは、1996年3月に創業者兼現社長の松村厚久氏が設立した「有限会社エイアンドワイビューティサプライ」に遡ります。松村厚久氏は、大学時代にサイゼリヤで4年間アルバイトをしたことで飲食業の面白さを知り、卒業後に入社した会社でディスコの企画・運営に携わり、非日常の演出に目覚めたそうです。飲食店起業の資金稼ぎのために設立したのが最初の会社で、そこから5年後の2001年、銀座に1号店「VAMPIRE CAFE」をオープン。翌年設立した株式会社ダイヤモンドダイニングをベースに、以降快進撃を続けてきました。

松村氏の目標は、「100店舗100業態」でした。これは、つまり全部業態が違う店を100店出店するということです。この意味について、松村氏は次のように語っています。『飲食店舗はすでに世の中にたくさんあって、これから新規参入するにあたり、目立つためには他社と違う事をやらなければいけないと思ったのと同時に、お客様に喜んでいただくこと、ただ喜ばせるだけではなく「歓喜」してもらう事が重要だと思いました。』(上場企業IRトップインタビュー:ブリッジサロンより)

 

松村氏によると、業態は違っても店舗の理念は共通しているということ。
『企業理念としては、「お客様歓喜」ということを徹底しています。とにかくお客様に喜んでもらうだけでは物足りない。歓喜するようなインパクトを与えるということを行っています。』

そして、共通の理念を持つ「たこ焼き屋」から「土佐料理店」までの100店舗100業種を、ついに2010年10月に達成しました。しかし、その達成の影には思いもよらない出来事が起こっていました。2005年、故郷の高知滞在中に、若年性パーキンソン病であると診断されたのです。

『治る見込みがないといわれる難病であることを知らされた時は、「どうしてこの俺が・・」という気持ちにもなりました。しかし同時に自分の心底に、「こんなところで倒れるわけにはいかない。とにかく突き進まなければならない」という気持ちがフツフツと湧いてきたのです。』(東洋経済オンラインより)この想いにより、当初の見込みより1年も早く、100店舗100業種を達成したのでした。

しかし松村氏はまだまだ止まりません。段々動かなくなる体に鞭打ち、2015年には東証一部に上場。そして、新たな目標として「1000店・売上高1000億円」を掲げたのです。2015年には、自身の病気のことをドキュメンタリー本で公表。その『熱狂宣言』という本は、2018年秋には映画化される予定です。

松村氏が会社を大きくする理由は、天塩にかけて育てた社員のポストを作るためだとか。新たな目標は、自分自身が病に負けず、モチベーションを保つための方策なのかもしれません。

目標に向かって急成長を続けているDDホールディングス。そんな松村氏の夢が、「100人は作る」と宣言している後続の社長ひとりひとりにしっかりと引き継がれる事を期待したいと思います。