FCをもっと知ろう!

ロードサイドで居酒屋成功

欠点は工夫で超えられる。海帆の挑戦

居酒屋チェーンが出店する場所といえば、繁華街や駅前、あるいはサラリーマンが闊歩するビジネス街でしょうか。

確かに殆どの居酒屋チェーンはそういう場所に出店しています。しかし、愛知県を中心として18業態100店舗を超える居酒屋チェーンを運営する『海帆(かいはん)』は、あえてロードサイドを中心に出店する戦略を取っています。

居酒屋をロードサイドで成功させた秘訣は何なのでしょうか。今回は、誰もが『ありえない』と考える立地条件を乗り越えた海帆の事例をご紹介します。

海帆の社長、久田敏貴さんの実家は50年以上の歴史を持つマグロ・カジキの専門卸売業を営んでいました。父親の急病で家業を継ぐことになった久田さんは、家業を発展させるために飲食業への進出を決意しました。そのとき、たまたま縁があった居抜きの物件が、ロードサイド立地のものでした。

飲食店の経験が全くなかった久田さんにとって、既に出来上がった店舗は魅力的でした。それに、町中の飲食店に鮮魚を卸していたこともあり、お得意先の競合店になることは避けたかったため、遠く離れたロードサイドはかえって都合が良いと考えたのです。

結果的には、居抜き店舗が元焼き肉屋で設備が殆ど使えなかったことや、賃料が安くても譲渡料が高かったことなど、決して『都合が良い物件』ではなかったものの、この経験が久田さんの原点になりました。こうして、記念すべき海帆の第一号店「なつかし処 昭和食堂」がオープンしたのです。

ロードサイドで居酒屋なんてと思われましたが、実際には営業は順調でした。要因は、近場に大きな工場や大学があったことでした。おまけに、そこからは顧客が産みだされただけでなく、アルバイト人材も確保できたのです。また、本業がマグロ・カジキ専門卸売業ですから、鮮魚を市場で仕入れ、柵切り加工して供給することできました。各店舗では新鮮な魚介類をリーズナブルに提供することができたのです。こうして、居抜き店舗で出店経費を抑え、競合店の少ないロードサイドを中心にして、安くて美味しい「昭和食堂」は店舗数を伸ばして行ったのです。

しかしながら、ロードサイドの居酒屋では、どうしても『飲酒運転』という問題にぶつかってしまいます。それを海帆はどのように解決したのでしょうか。

それは、普通にあるようで、実はあまり見ない「居酒屋の送迎バスサービス」でした。このアイデアは、久田社長が家業を継ぐ前に手伝っていた旅館業での経験から産まれたものでした。そして、それを軌道に乗せるため、社長はじめ次長、部長、役員クラスの全員が、中型限定解除の免許を取得し、実際にマイクロバスを運転したのです。また、マイクロバスの効率的な運営のため、3,4店舗に1台のバスを割り当てました。

実は、この運用を可能にしたのには、別の要因がありました。それは、海帆の出店計画が、名古屋駅を中心とした小さいエリアでブランド力を集中的に上げて行くという『ドミナント戦略』だったことです。こうして、送迎付きで安心して全員で楽しめる居酒屋「昭和食堂」は、『ロードサイド立地居酒屋』の大きなマイナス要素を乗り越えたのでした。

2018年3月期の海帆の業績は、出店計画の遅れや不採算店の閉店などから売上高、経常利益ともに前年比マイナスとなりました。今、海帆では、1)既存店舗の収益力向上、2)新規出店による事業拡大、3)管理組織の強化を3本柱にして、19年3月期は営業損益黒字化を目指しています。

「昭和食堂」からはじまった海帆の事業ブランドは今や18にも増えました。少しでも美味しい魚を広い世代のお客様に楽しんでもらいたいという久田社長の原点は変わりません。マイナス要素をプラスに替えて、海帆がまた成長していく姿を楽しみにしたいと思います。