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チェーン店で注意が必要な労務管理

コンビニの大手チェーンでは、加盟店からの問題提起がきっかけとなり、24時間営業を見直すことになりました。人手不足が主な原因ですが、深夜は来店者も少なく売り上げ的にはそれほどない上に、照明など無駄な電力も使わなくて済むとなれば、良い事ばかりかと思われます。しかし不思議なことに24時間営業の店舗が深夜を休業とすると、昼間の売上が減るのだそうです。いつでも開いているということが顧客の購買動向に影響するのだと言われています。

さて、大手のコンビニチェーンでも太刀打ちできない人手不足は、どのチェーン店でも深刻です。

今まではブラックが言わば当たり前であった飲食店の従業員にも、働き方改革に沿った労働環境を準備しなければなりません。残業時間を月45時間以内に抑えることや、勤務終了時間から翌日の勤務開始時間までしっかり休めるように「勤務間インターバル」制度を導入するなど、チェーン本部の義務や努力義務を定めた法律が整えられてきています。

そんな中、人手不足の飲食チェーンで良く見られるのが「ヘルプ」という方法です。これは、あるチェーン店舗で急に人が要るときに、他の店舗から「ちょっとヘルプに来てもらう」という意味です。本部が同じチェーン店なら、お互いに困ったときに助け合うのは当たり前という感覚があっても不思議ではありません。急な宴会やインフルエンザによる欠員など、人の融通を複数店舗で賄えたら、とても合理的だと誰もが思うことでしょう。

しかし、この『ヘルプ』を労務管理の観点から考えると、注意しなければならない事が二つあります。

まずは、『店舗ごとに時給が違う場合の注意点』です。

ある組織に所属している人が、業務上の必要により別の場所で勤務すること(出張)は、珍しくありません。それと同様と考えれば、ヘルプ勤務は所属している店舗の時給が適用されることになります。その組織の就業規則で出張手当等の定義があり、それに該当する場合には、別途手当が支給されることもあるでしょう。しかし、『店舗間のヘルプに関する規則』が決められていて、『働いた店舗の時給が適用される』と明記されている場合には、ヘルプ先店舗の時給が適用されます。この場合には、時給が異なることをあらかじめ本人に通知しておく事が大切です。ヘルプ先店舗の時給が低い場合には、特に事前の説明・承諾が必須と考えなければなりません。

次に、『就業時間の考え方』です。

元の店舗で勤務を行った後でヘルプに行く場合、その日の就業時間は2店舗の勤務時間の合計となります。もしも8時間を超えている場合には、超えた部分が時間外労働単価の適用となります。

もちろん、一日8時間を超えていなくても、一週間の労働時間の合計が40時間を超えている場合には、超えた時間は時間外労働単価の適用となります。

店舗ごとの勤怠管理を行っている場合には、このようなデータ管理を行うことが難しいかもしれないため、本部と事前に相談しておく必要があります。

毎日現場を回すのに必死な店長さんにとって、バイトのヘルプは時には大変助かるものかもしれません。“持ちつ持たれつ”で、お互いの店を盛り上げようという意識に悪意はもちろん無いでしょう。しかし、みんなの善意で成り立っているとばっかり思っていても、『違法』状態は困ります。もしもSNS等で拡散されてしまったら、チェーン全体のイメージダウンにつながって、ますます人材不足が進んでしまうかも・・・。

このようなリスクをしっかりと意識して、何が正しい労務管理なのか、どうすればいいのかを、普段からしっかりと学んでおきましょう。