冷凍食品の華麗なる躍進
高級冷凍食品コーナーが続々誕生
ここ数年で老舗百貨店や高級スーパーに大きな冷凍食品専門コーナーが設けられることが増えてきた。
「冷凍食品=安くて手軽な食べ物」のイメージが強かったが、ここに来て高級ラインや健康志向などの新しい冷凍食品ジャンルが台頭してきたのだ。
伊勢丹、阪急百貨店、松屋銀座、阪神百貨店、三越、高島屋…錚々たる有名百貨店がこぞって冷凍食品に力を入れている。
販売されている冷凍食品は1000円台から2000円台が主流だが、中には1万円を超えるものもあり売上は好調だと言う。
地方在住だと雑誌やテレビで有名な銀座の人気店には行きたいと思ってもそう気軽に行くことができない。またここ数年のコロナ禍ではたとえ近くても店で食事をするのをためらう人々も多かった。そんな需要に後押しされた形だ。
今や冷凍食品は「有名店の作りたての料理を家庭で味わうことのできるツール」として定着した感がある。
冷凍食品が生まれたのは実は大正時代
お弁当のお供や食卓の一品として、また近年ではそれに加えて高級冷凍食品の躍進と、ずっと身近な食材であった冷凍食品だが実はその歴史は意外と古い。
日本の冷凍食品の始まりはなんと1920年代にさかのぼる。
現在のニチレイフーズの前身である葛原冷蔵株式會社が1920年代に北海道に水産物の冷凍工場を建設したのが始まりと言われているが、1920年代と言えば日本はまだ大正時代。想像を超えた長きにわたる歴史を持つ食品なのだ。
もちろん当初は水産物をいかに新鮮に市場に流通させるかというところに重きを置いた冷凍技術で、今のように身近な料理の一品として販売していた訳ではない。
業務用食材としてその後発展し続けて来た冷凍食品が一般家庭に普及しだしたのは、家庭用冷凍冷蔵庫及び家庭用電子レンジが発売された1960年代後半のことである。
1970年代になると、コンビニエンスストアやファストフードの台頭により冷凍食品は本格的に広まり、1980年代ごろにはお弁当の材料として、また、晩ごはんに一品追加するお手軽な食材として欠かせないものになって行った。
これからの冷凍食品ビジネス
長い時間を掛けてお茶の間に浸透した冷凍食品が、近年特に人気を博している理由としては、
1.冷凍技術の躍進的な発達で料理の品質が均一化され、いつどこで食べても美味しい料理が味わえるようになったこと
2.共働きが増えたことなどによる時短のニーズにマッチしたこと
3.最近のSDGsとの関連でフードロスの少ない点が評価されたこと
4.高齢化社会でお年寄りが安全に簡単調理できること
などが挙げられる。
日本の社会情勢から考えて今後も冷凍食品のニーズが増えていくことは確実だろうが、ビジネスとしてはどのような形態が伸びていくのだろうか。
冷凍食品ビジネスで最近トレンドに上がって来ているのが「冷凍食品自販機」である。
和洋中あらゆるジャンルの専門店が自慢の味をそのまま冷凍し自販機で販売したり、お寿司やステーキなど高級料理の冷凍自販機ができたり、地方の名産品が冷凍自販機で売られていたり、そのバリエーションは留まるところを知らない。
また、全国の選りすぐりの冷凍食品を集めた冷凍自販機のセレクトショップやフランチャイズ展開で冷凍自販機販売を行う会社など面白いビジネス形態も増えている。
冷凍ビジネスに参入しようとしている側も、これまでになかったような珍しい冷凍食品を楽しもうとする消費者も、引き続き冷凍食品の躍進に乞うご期待である。