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「鳥貴族」が「やきとり大吉」を買収の勝算

居酒屋チェーン業界に激震が…

2022年9月13日、つい2ヶ月前のことだ。焼き鳥居酒屋業態のフランチャイズ界に大きな衝撃が走った。

全国で居酒屋チェーンを展開する鳥貴族ホールディングスが同じ居酒屋チェーンの「やきとり大吉」を運営するダイキチシステムを買収すると発表したのだ。

ダイキチシステムはサントリーホールディングスの100%子会社で、直営店は持たずすべてフランチャイズで「やきとり大吉」を全国500店舗強展開していた。

巨大居酒屋チェーンの誕生

今回の買収で鳥貴族ホールディングスは、サントリーホールディングスから全株式を買取り、ダイキチシステムを完全に子会社化するが、全国500店舗強の「やきとり大吉」はブランドを維持し存続する。

これによって鳥貴族ホールディングスは、従来の居酒屋チェーン「鳥貴族」約600店舗と合わせて全国1100店舗を超える巨大居酒屋チェーンを運営することになる訳だ。

しかし、コロナ禍の傷跡もまだ癒えない中、この大きなM&Aに踏み切った鳥貴族ホールディングスはどこに勝算を見出したのだろうか。

スケールメリットという武器を手に入れて戦う鳥貴族

まず、このふたつのブランド、「鳥貴族」と「やきとり大吉」の出店立地や顧客層が被らないことが挙げられる。

「鳥貴族」は繁華街を中心に店舗があり、ビルの2階より上に入っていることが多い。会社帰りの若いサラリーマンや大学生など20代~30代が客層のイメージだ。

それに対して「やきとり大吉」は住宅街の比較的こじんまりとした路面店が多く、客層も「鳥貴族」に比べると年齢が高くリピーターが多い傾向がある。

このことからこの2つのブランドはお互い補い合うことはあってもぶつかり合うことはない。共存共栄が可能であると言える。

鳥貴族ホールディングスの大倉忠司社長は、創業当時から1000店舗という数字を目指して来た。

この度の買収によりコロナ禍で頭打ちになっていた店舗数が一気に倍以上となり、ついに1000店舗を超えることになる。

店舗数が増えたことにより、仕入れなどでスケールメリットを生かした経費の節減ができるようになることも大きい。

今後、今まで「鳥貴族」としては未進出だった北海道・東北や北陸、中国・四国それに九州・沖縄への出店を強化するとしているが、すでに「やきとり大吉」は全国に店舗があるので、力強い後押しになることだろう。

今回のこの二大居酒屋チェーンの再編が、コロナ禍で大きな痛手を負った焼き鳥居酒屋業態、ひいては飲食業界全体の盛り返しの最初の偉大な一歩になるかもしれない。