昆虫食ビジネスの未来を探る
日本の昆虫食の歴史
最近、昆虫食がブームだという。
無印良品で「コオロギせんべい」が発売されたり、大阪の近畿大学では「昆虫由来のタンパク質を活用した産学連携による商品開発を通じてSDGsへ貢献することによって、大阪・関西万博への出展を目指すプロジェクト」が発足したり、何かと話題になっている
虫を食べるというと、眉をひそめる人も多いかもしれないが、実は日本には昔から昆虫を食べる習慣があった。
現にイナゴの佃煮や蜂の子を食べたことがあるという人は結構いるのではないだろうか。
それらは今ではすっかり一部の地域の郷土食の扱いを受けているが、かつてイナゴは広い地域で食べられている普通の食材だった。
江戸時代にはイナゴを串に刺してタレを付けて焼く「イナゴの蒲焼」を子どもたちが小銭稼ぎの為に売り歩いていたという記述が残っている。
基本的に肉食を禁じられていた時代には、イナゴなどの身近な昆虫は手軽に食べられる良質なタンパク源として人気があったのだろう。
いつから昆虫食はゲテモノ扱いになったのか
明治時代になって、肉食は解禁になったがまだまだ都市部に限られており値段も高価だった。
その傾向は第二次大戦まで続いており、大都市以外では昆虫を食べることはまだまだ珍しくなかった。
戦後世の中が落ち着き、高度経済成長期がやってくると、安い輸入牛肉や豚肉が市場に出回るようになった。そうなるとやはり肉の方が美味しい。
このあたりから昆虫食はすっかり影を潜め、一部の地域で細々と生き残る郷土食になっていった。
サステナブルな食材としてどこまで伸びるか
日本能率協会総合研究所が2020年に公開しているレポートを見ると、世界の昆虫食の市場規模は2019年実績では70億円であったが、2025年には1000億円に達する見込みだと言う。
昆虫は生産時に必要なエネルギーが、牛などの従来の食肉家畜に比べて極端に少ない。これが環境意識の高い欧米を中心に人気が出た理由のひとつだ。
EC(欧州委員会)はミルワーム、トノサマバッタに続いてヨーロッパ・イエコオロギを新食品としてEUの市場で売ることを認可した。
この動きはもちろん日本にも影響を与えている。
昆虫食に参入する企業が次々に現れ、昆虫の形に拒否感のあるユーザーにも食べてもらえるように、粉末にしてプロテインバーやクッキー、チョコレート、パン、ハンバーグなどに加工され出回りはじめているのだ。
編集子もつい最近、冒頭で例を挙げた近畿大学の「スナックコオロギ(塩味)」を食べる機会があった。
形状さえ気にしなければ(スナックコオロギはコオロギの姿がそのまま残っている)コクのあるしっとりした煮干しのようで結構おいしい。
とは言え、もっと美味しいものが溢れているこの社会で、敢えて昆虫を食べるのは環境問題や地球の未来を真剣に考える意識を高く持たないと難しいというのが正直なところではある。
今後、昆虫食というムーブメントがどのように市場を席巻していくのか、ビジネスとしてどこまで大きくなるのか興味は尽きない。