コンサルタントコラム

総合型から専門型へ。ライブ感が人を呼ぶ居酒屋業界

湖崎 一義

(株)船井総合研究所 チーフ経営コンサルタント 湖崎 一義

居酒屋の顧問契約先数は船井総研でもトップクラス。特に、新店開発、リニューアル、既存店業績アップ支援を得意としており、北は北海道、南は宮崎県まで日本全国を駆け回る。

居酒屋業界参入にあたってのポイントは大きく3つです。その3つのポイントをしっかり押さえた上で、新規出店をしていただきたいと思います。

居酒屋ビジネスはここを押さえろ!大切な3つのポイント

大切なのはオンリーワンのコンセプト

まず1つめですが、始めようとしているビジネスモデルが商圏の中でオンリーワンのコンセプトになっているか?あるいは、ナンバーワンのコンセプトになっているか?を確認してください。

沢山の店がある居酒屋の中でお客様に選ばれるお店にしないといけない。例えば、似たようなお店が既にあるのに、また後から同じようなお店を出してしまうと、集客に苦労しますしお客様が分散してしまいます。

今のお客様というのは、1つのお店に何回も同じシチュエーションで通うよりは、「今日このメンバーだったら、こういうお店に行こう」、あるいは「今日はなんか気分的に肉が食べたいから、牛肉中心のお店に行こう」、あるいは「今日はなんか焼き鳥気分だ」または「最近肉ばっかりだから魚にしたい。だから海鮮居酒屋に行こう」というふうな形で、非常にその時の気分であったり、そのとき一緒にいるメンバーであったり、そのとき使える予算などで、お店の使い分けが始まっています。

最も集客に苦戦しがちなコンセプトというのは、実は「総合居酒屋」なんですね。総合になればなるほど、お客様が見たときの特徴というのが非常に薄くなっていくと。 そうしますと、逆に選ばれ難いお店になってしまいますので、まず出されるビジネスモデルが、商圏の中で特徴のあるコンセプトかどうか?ということを見極めてください。

場所とターゲットを誤るな

2つめはビジネスモデル。フランチャイズにおいてそのビジネスモデルが、出す場所とターゲット、これとマッチしているかどうか?ということを是非見ていただきたいですね。

例えば、サラリーマンをターゲットにしているビジネスモデルを出店する場合、場所は繁華街であり、ビジネス街になってくるかと思います。それを間違えて住宅街に出してしまったり、あるいは郊外ロードサイドに出してしまう。極端な例ですがズレた場所に出店すると最初っから苦戦する。当たり前のことですが、意外とそういうふうなお店があるということなんです。

例えば20代30代をターゲットにしたコンセプトの店を若者の少ない場所に出しているケースもあります。出店する前にその物件の『夜の状況』などもしっかり見て、ターゲットの客層がその周辺にいるのかという確認だけはやっておく必要があるというふうに考えています。

営業利益を10%を死守する

3つめのポイント。居酒屋ビジネスと言いますのは、実は営業利益がそんなにたくさん出るビジネスではないんですね。まぁ10%ぐらい出ればいいという業界です。営業利益をしっかり10%は出していこうとするとまず「原価率」、それから「人件費率」、それから「家賃比率」、この三大経費と呼ばれているコストを、売り上げの70%以下に抑えないと難しくなるということなんですね。

フランチャイズのビジネスモデルは最初の段階から、原価率が何%、人件費率は他の実際にやってるお店でいうと何%というように「FLR(食材費・人件費・家賃)」のうちの「FL」は把握できると思います。 しかし、最後の「R」、家賃の部分に関しては、何処に店舗を出すか?どういう物件をチョイスするかによって変動しますので、先程言いましたように「FLR」の合計が70%以内、これは非常に重要な指標になってきます。

物件選定、家賃が売り上げの何%で営業していけるのか?ということを最初の段階で見極めた上で物件のチョイスをしっかり行ってください。

居酒屋トレンドのキーワードは『使い分け』

専門店の時代へ突入

居酒屋が少なかった時代は気に入ったお店に何回も足繁く通うというスタイルが多かったのですが、今は利用するシーン(場面)や一緒に行く仲間、あるいはお財布事情でお店の使い分けをします。つまりぼやっとしたコンセプトの「総合型」の居酒屋は特徴が無いため、お客さんを獲得するのに苦戦することになります。もしこれから居酒屋業界に入ろうと思うなら専門特化したお店を考えてください。

フランチャイズビジネスの中にもいろんな業態があります。目玉商品があったり、何かに特化した居酒屋など時流適合していますので、あらためてそういう時代に入っているということを、しっかり意識付けしてください。

『お値打ち感』を前面に出して商品提供

商品に関してのトレンドは「お値打ち感」というキーワードが表しています。
例えば「シーザーサラダ」。それがテーブルに出てきて、そのボリュームや見た目や内容…チーズがふんだんに入っている、トマトもたくさん入っている、あるいは温泉玉子も付いている、そんな風にお客様が”バリュー“を感じるようなものにしなければならないのですが、逆になっている商品も多々見受けられます。

そこでお客様に「ここはなんか割高だな…」と思われてしまうと、次のリピーターづくりに非常に苦戦していくという流れになります。一つ一つの商品を価格と照らし合わせて食事するというよりは、食べて飲んで、最後のお会計で「割高だったなぁ」と感じられるのか、あるいは「お値打ちだったなぁ」と感じられるのかによって、その次のリピーターになるかどうかというところに非常に影響してきます。ですから、商品のバリューにこだわって商品提供をしていく必要があります。

キッチンを舞台にする『ライブ感』

例えば焼き鳥を焼いている姿や刺身をさばいている、魚を下ろしている、あるいは寿司を握っているところが客席から見れる。これを「ライブ感」と言ってるんですが、現在はそのようなお店が非常に高い集客力を持っています。

オープンキッチンで調理している姿や、匂い、音、煙を目の当たりにするとお客さんも興奮してきますし、「美味しそうなお店に来たなぁ」というふうな、売り場全体で美味しさ感が出るので、非常に効果的です。

居酒屋を始める時には必ず考えるべき3つのこと

絶対欠かせない『QSC』

「QSC」というのは何なのか?ということですが、まず「Q」は「クオリティ」。商品の品質のことを指します。出来上がっている商品でも、温かいものは温かい状態で届けた方が美味しくなる…そんな細かい部分も含めた品質の追及が大切です。

「S」は「サービス」つまり、接客のことを意味します。接客は居酒屋にとっては非常に大きな要素です。接客が悪いと「次また来たく無いな」と思われてしまいます。オープンした後、日々努力をし続ける重要なポイントになります。『いらっしゃいませ』が言えて、料理を運ぶ、あるいはオーダーを取る。そういったところが出来たら次のステップである、おすすめトークが言えるようになる、また『いらっしゃいませ』も、全員が声を合わせて言えるようになるなどを追求して行ってください。

最後の「C」は「クリンネス」、「清潔感」です。お店を長くやっていると老朽化して床の黒ずみが出たり、エアコンのフィルターにほこりが被っていたりしがちになります。しかしやはり客席に関しては徹底的に掃除をしていかないと、「あ、このお店、何か汚いな」と思われますので清潔感を保つ努力をし続けなければいけない。

この「QSC」の維持、あるいはレベルアップというのが、居酒屋というのは非常に必要になってくる業態ですので、きっちりと押さえてください。

人材戦略がお店の将来を左右する

2つめは「人材の確保と育成」です。採用に関しては若干厳しくなっていますが、そんな中でも採用が上手くいっている会社はたくさんあります。もちろん給与であり休みであり、色んな待遇の部分に関しても、企業側の努力が必要になってきている。それに加えて「人材の定着」の部分。採用した方を企業が大事に育てていくというスタンスが大切です。

外食業界は人材の確保はある意味競争ですので、まず採用して、そして育成し、定着させていくというところまでを見据えた人材戦略を是非立てて行かなければなりません。

初期投資の回収に何年掛けるか

最後のポイントとして、新規参入にあたって掛かった1千万円単位の初期投資をいかに速く回収できるかが非常に大切になってきます。

業界的には初期投資は5年で回収しようとよく言われていますが、私は遅くとも3年くらいで回収して欲しいと考えています。それはやはり売り上げに対する利益がどれだけ出るかという事になります。

初期投資がどんなに掛かったとしても、例えば原価率や人件費率、そして家賃比率の合計を65%ぐらいで収めれば多くの利益が出てきます。その利益で初期投資がどのくらいの期間で回収できのるかということを見極めた時に、3年ぐらいで回収できるような出店を是非心がけてもらいたいと思います。